top of page

農業・生態学へのICTの応用

近年、ドローン空撮や画像解析技術など、ICTを農業に応用した研究が非常に盛んです。われわれは、東京大学のフィールドフェノミクス研究チームの郭威助教などと一緒に、ICTを生態学的な圃場試験や野菜やダイズの栽培、雑草防除などさまざまな野外シーンで活用するための研究を行っています。

IMG_4172.jpeg
BB8D1682-D079-473E-9860-3A31C64F06B2 (1)

2. ドローン空撮と融合した圃場試験法を開発

1930年代に圃場試験法が体系化されて以来、世界中の野外圃場で植物栽培試験が行われています。圃場試験では、データの取得に大きな労力がかかるためデータ数が少なく、また野外環境であるためデータに大きな誤差が含まれてしまうという難点があります。一方、ドローン空撮や画像解析技術の発達により、圃場全面の高解像度な植物形質データが取得できるようになってきました。しかし、従来の圃場試験とドローン空撮画像のデータを組み合わせて解析する方法はありませんでした。

 

 そこで研究チームは地理情報システム(GIS)ベースのシンプルな解析手法(GAUSS:GIS-based Analysis for UAV Supported field Survey)を開発し、ダイズとコムギの輪作栽培をモデルとして、どのようなダイズ品種や形質が後作のコムギの収量を増加させるかを検証しました。生態調和農学機構内の実験圃場でダイズ14品種を栽培したのちコムギ1品種(さとのそら)を栽培し、各ダイズ品種の栽培位置とコムギの収量の空間的なバラつきの関連を調査しました。

 その結果、従来の手法に比べて100倍程度の空間解像度を持つデータが取得でき、各データの位置情報を用いた統計手法により、コムギの収量を増加させるダイズ品種を推定することに成功しました。この手法はシンプルかつ低コストであり、今後、様々な作物を対象にした圃場試験や農業現場、草地などの自然生態系での応用が期待されます。

Fukano, Y., Guo, W., Aoki, N., Ootsuka, S., Noshita, K., Uchida, K., ... & Kubota, H. (2021). GIS-Based Analysis for UAV-Supported Field Experiments Reveals Soybean Traits Associated With Rotational Benefit. Frontiers in plant science, 12, 1003.

1. ドローン空撮画像から植物の形質を自動推定

ドローン空撮や画像解析技術の発達により、生産農学をはじめ、さまざまな研究分野でドローンを用いた植物の形質推定技術が開発されています。しかし、これまでの多くの研究では、水田やコムギ畑のような単一種を対象とした群落(プロット)レベルの形質推定を目的としており、個体レベルの形質を推定する手法はほとんど開発されていません。ドローン空撮による個体レベルの形質推定が難しい理由の一つが、雑草の存在です。雑草は、対象の植物と雑草の区別を難しくするため、画像解析上大きな問題となります。
 そこで、空撮画像から雑草と対象植物を自動で分割するアルゴリズムを開発することで、この問題を解決しました。その上で、ドローン空撮画像から対象個体の3次元再構築を行い、個体ごとの草丈や容積、植被率など形質を自動で推定する手法を開発しました。加えて、これまで定量化の難しかった「植物体の輪郭」を推定・比較する手法を考案しました。本手法の有効性を検証するために東京大学生態調和農学機構の圃場で栽培されたキクイモ60株をモデルとして解析したところ、対象植物と雑草や土壌は精度よく領域分割されており、推定された植物の草丈は地上で人が実測したものと高い相関を示しました。

 今後、個体ごとの形質データが必要となる生態学・園芸学・林学などの幅広い植物科学分野への応用が期待されます。

Guo, W., Fukano, Y., Noshita, K., & Ninomiya, S. (2020). Field‐based individual plant phenotyping of herbaceous species by unmanned aerial vehicle. Ecology and Evolution, 10(21), 12318-12326.

20201020-1.jpg
  • Copyright © 2017 All Rights Reserved.

bottom of page