深野祐也 Yuya Fukano, Ph.D.
千葉大学大学院 園芸学研究科 作物学研究室
農業・生態学へのICTの応用
近年、ドローン空撮や画像解析技術など、ICTを農業に応用した研究が非常に盛んです。われわれは、東京大学のフィールドフェノミクス研究チームの郭威助教などと一緒に、ICTを生態学的な圃場試験や野菜やダイズの栽培、雑草防除などさまざまな野外シーンで活用するための研究を行っています。

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2. ドローン空撮と融合した圃場試験法を開発
1930年代に圃場試験法が体系化されて以来、世界中の野外圃場で植物栽培試験が行われています。圃場試験では、データの取得に大きな労力がかかるためデータ数が少なく、また野外環境であるためデータに大きな誤差が含まれてしまうという難点があります。一方、ドローン空撮や画像解析技術の発達により、圃場全面の高解像度な植物形質データが取得できるようになってきました。しかし、従来の圃場試験とドローン空撮画像のデータを組み合わせて解析する方法はありませんでした。
そこで研究チームは地理情報システム(GIS)ベースのシンプルな解析手法(GAUSS:GIS-based Analysis for UAV Supported field Survey)を開発し、ダイズとコムギの輪作栽培をモデルとして、どのようなダイズ品種や形質が後作のコムギの収量を増加させるかを検証しました。生態調和農学機構内の実験圃場でダイズ14品種を栽培したのちコムギ1品種(さとのそら)を栽培し、各ダイズ品種の栽培位置とコムギの収量の空間的なバラつきの関連を調査しました。
その結果、従来の手法に比べて100倍程度の空間解像度を持つデータが取得でき、各データの位置情報を用いた統計手法により、コムギの収量を増加させるダイズ品種を推定することに成功しました。この手法はシンプルかつ低コストであり、今後、様々な作物を対象にした圃場試験や農業現場、草地などの自然生態系での応用が期待されます。
Fukano, Y., Guo, W., Aoki, N., Ootsuka, S., Noshita, K., Uchida, K., ... & Kubota, H. (2021). GIS-Based Analysis for UAV-Supported Field Experiments Reveals Soybean Traits Associated With Rotational Benefit. Frontiers in plant science, 12, 1003.
